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動物と戦争: 真の非暴力へ、《軍事―動物産業》複合体に立ち向かう (Japanese) Tankobon Hardcover – October 26, 2015

Published Date: January 22, 2021

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Hardback

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Description

戦後七〇年を経た日本が軍国化へと退行しつつある現状は、平和をこいねがう人々にとって愕然とすべき事態であるに違いない。戦後世代を導いたものは、原爆と空襲の記憶でも、沖縄やシベリアの経験でも、日本の戦争責任の反省でもなく、抑止論すなわち「恐怖の均衡」の論理だった。かくして、戦地に赴く自衛隊員の犠牲や、敵方の報復攻撃を受ける日本の民間人の犠牲、あるいはごく稀に他国人の犠牲を憂慮する声が、今や方々に飛び交うようになった。
ところで、そうした言論の中、完全に抜け落ちている視点がないだろうか――人間以外の生きものを気づかう視点が。「何、動植物? 多くの人命が危ぶまれている時にか」と、人はそう言うかもしれない。我々は人間中心の思考に慣れ過ぎているので、この反応も驚くには当たらない。しかし、命に上下を設けるのは抑圧者の発想ではないだろうか。苦しむ者に等しく手を差し伸べる献身、それが平和主義の原点であるとするならば、「動物なんか」と考える人は平和の理念から最も遠ざかっている。反戦・平和をめざす個々の活動の幅には無論、限界があるが、それにしても、ある集団の犠牲者が(同じ戦争の被害を受けるというのに)意識にすら上らないでいいのだろうか。自国民のことしか考えない平和論が偏狭であるのと同様、人間以外の生きものを考えない平和論もやはり偏狭であると思う。無視と黙認は、時に最大の暴力になる。
本書は平和学と動物福祉に携わる海外気鋭の活動家、研究者らが、人間以外の生きもの、特に動物に焦点を当て、その戦争被害を様々な角度から照らし出した画期作である。ここに紹介されている事例も世界を覆う暴力の一片鱗に過ぎないことは言うまでもないが、この著作を通して、日本の平和論がより大きな視座に至り、前進を遂げることを願ってやまない。(いのうえ・たいち 翻訳家)

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内容(「BOOK」データベースより)

人間中心の平和主義を超えて「人間の、人間による、人間のための平和思想」には限界がある。“非暴力”“平和”の概念を人間以外の動物の視点から問い直す。

著者について

Anthony J. NOCELLA II 米・ハムライン大学客員教授を務める動物擁護・平和活動家。広く領域横断研究に携わる。

Colin SALTER 豪・ウーロンゴン大学教育設計担当。動物・環境・社会正義運動を研究。

Judy K.C. BENTLEY ニューヨーク州立大学准教授。専門テーマは差別撤廃、障害克服、批判的動物研究。

翻訳家

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

ノチェッラ,二世,アントニー・J.
米・ハムライン大学教育学部客員教授を務める著名な教育者、執筆家、平和活動家。米・シラキュース大学マックスウェル・スクールにて社会学博士号を取得、同校の紛争・協調研究発展プログラム(PARCC)に所属。平和構築・紛争研究および教育文化研究科の修士号、調停学の修了証(米・フレズノ・パシフィック大学)、女性学および越境紛争学の上級修了証(後者は米・シラキュース大学)を所持。批判的動物研究、障害者研究、環境倫理学、都市教育学、平和・紛争学、批判的教育学、アナキスト研究の草分け的存在であり、批判的メディア研究、批判的犯罪学、障害者合同教育(inclusive education)、クエーカー式教育法、ヒップホップ研究にも関心を寄せる

ソルター,コリン
豪・ウーロンゴン大学教養学部・法学部・芸術学部教育設計担当。加・マックマスター大学平和研究センター助教。工学士優等学位、文学士優等学位、博士号を所持。環境工学士として、オーストラリアおよび太平洋を対象に社会面、文化面、環境面からみて適切な技術計画の設計、監視にあたる。のち大学に戻り、平和と正義を求める草の根活動の効果について調べるべく10年以上の長期研究に携わる。数々の論文と研究成果を発表し、先住民族の尊重と再評価を企てた運動についてや、現行の動物・環境・社会正義運動の戦略について、および男性原理、例外主義、暴力、非暴力の関わりについて論じている

ベントリー,ジュディー・K.C.
ニューヨーク州立大学コートランド校の基礎教養・社会先導学科准教授。社会正義ジャーナル『社会先導、体制変革』の編集主任。批判的動物研究のほか、象徴的差別撤廃(symbolic inclusion)や障害児の自己教育構築力を研究テーマとする

井上/太一
1984年生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業。会社員を経たのち、翻訳業に従事する。主な関心領域は動植物倫理、環境問題。語学力を活かして動物福祉団体や環境団体との連携活動も行なう(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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